Wi-Fiに接続した際に、「MACアドレスが毎回変わる」「同じ端末なのに別の機器として認識される」といった現象に戸惑ったことはないでしょうか?
その原因の多くが、スマートフォンやPCに標準搭載されている「MACアドレスのランダム化」機能です。
この機能はプライバシー保護の観点から非常に重要な役割を持つ一方で、
- Wi-FiのMACアドレス制限が機能しない
- IPアドレス管理が煩雑になる
- ネットワーク機器のログが追えない
といった実務上の課題を引き起こすこともあります。
本記事では、
- MACアドレスランダム化の仕組み
- 実際の動作(どう変わるのか)
- ネットワークへの影響
- オフにすべきかどうかの判断基準
を、分かりやすく、解説していきたいと思います。
MACアドレスのランダム化とは?
MACアドレスとは、スマートフォンやPCなどのネットワーク機器に製造時付与される、世界で唯一の48ビット(16進数12桁)のハードウェア固有番号です。
通常、このMACアドレスは、機器固有で重複が無く、ネットワークインターフェイスごとに固定されており、変更されることはありません。その為、今までは、このMACアドレスを機器識別番号として、セキュリティ制限などに使用してきました。
しかし近年では、プライバシー保護の観点から「MACアドレスのランダム化」という仕組みが導入されています。
これは、簡単に言うと、Wi-Fi接続時に本来のMACアドレスではなく、一時的に生成された別のMACアドレスを使用する機能の事を言います。
なぜMACアドレスはランダム化されるのか
従来のMACアドレスは固定であるため、以下のようなリスクがありました。
- 公衆Wi-Fiでの端末追跡
- ショッピングモールなどでの行動分析
- 個人の位置情報の特定
これらを防ぐために、OSレベルでMACアドレスを変化させる仕組みが採用されています。
👉 「MACアドレスランダム化」とは、つまり、ユーザーのプライバシーを守るための機能です。
MACアドレスランダム化の仕組み

MACアドレスランダム化は「毎回完全にランダム」ではなく、一定のルールに基づいて動作します。
OS(Android OS / Apple iOS / Windows)によって動作の違いがありそうですので、それぞれのOSで動作の違いを調べてみました。
Android OS
Android OSでは、かなり早い段階で、MACアドレスランダム化を実装しました。
最初にAndroid OSでMACアドレスランダム化されたのは、「Android OS 10」です。
その後、「Android OS 12」で仕様が追加されています。
- Android OS 10以降の実装
- Android OS 12以降の実装
① Android OS 10以降の実装
ネットワーク毎に異なるMACアドレスを使用する「永続的MACアドレスランダム化」が、Android OS 10から標準化されました。OSの初期値では、MACアドレスランダム化は有効です。
Android 10 リリースノート
② Android OS 12以降の実装
Android OS12からは、「非永続的MACアドレスランダム化」が実装されました。Android OS 10では、「永続的」でしたが、OS 12からは、接続毎、ある一定時間経過後、などに、新しいMACアドレスを生成する仕組みが取り込まれています。
この為、より強力なプライバシー保護が可能になりました。
Apple iOS
調べてみると、実はApple iOSが最も早く、MACアドレスのランダム化を実装されたようです。資料を調べてみて分かりました。
Android OS同様、iOSでも2段階のMACアドレスランダム化の仕組みが実装されています。
- iOS14以降の実装
- iOS18以降の実装
① iOS14以降の実装
Android OS 10同様、「永続的MACアドレスランダム化」が実装されるようになりました。SSID毎に異なるMACアドレスが割り当てられます。
Apple Support
② iOS18以降の実装
iOS18以降では、MACアドレスランダム化が細分化されました。
プライベートWi-Fiアドレス機能がアップデートされ、以下の3つの動作モードに対応するようになりました(ネットワークごとに選択可能)。それにより、環境によりセキュアなネットワークを構成する事が可能になりました。
- オフ:本来の MAC を使用
- 固定:SSID ごとに固定されたランダム MAC(従来の方式)
- ローテーション:弱いセキュリティのネットワークでは MAC を定期的にローテーション
Windows OS
Windows 10 で初めて、一般ユーザーが設定画面から簡単に使える MACアドレスランダム化が導入されました。Android OSやApple iOS同様に、SSID毎異なるランダムMACアドレスを生成します。
もちろん、現在サポートOSであるWindows 11でもMACアドレスランダム化は導入されています。
SSIDごとにMACアドレスが変わる仕組み
多くの端末では、Wi-FiのSSIDごとに異なるMACアドレスが生成されます。
- 自宅Wi-Fi → MACアドレスA
- 会社Wi-Fi → MACアドレスB
- カフェWi-Fi → MACアドレスC
このように、接続先ごとに異なる識別子が使われます。
接続時とスキャン時の違い
MACアドレスランダム化には、主に2つの動作があります。
- スキャン時:周囲のWi-Fiを探す際にランダム化
- 接続時:Wi-Fi接続時にもランダム化
特にスキャン時のランダム化により、第三者による追跡が困難になります。
【実演】MACアドレスは実際にどう変わる?
ここでは、実際に、以下2つのOS
- Android OS
- Windows OS
で、MACアドレスランダム化の動作を確認してみたいと思います。
1.Android OS
使用するAndroid OS端末は、私の使用しているスマホ「SHARP AQUOS Sense 8」を使用します。

1-1.AQUOS Sense 8の「OSバージョン」と「MACアドレス」
「設定」-「デバイス情報」から確認
- Android バージョン 15
- Wi-Fi MACアドレス 8c:52:19:69:35:72

1-2. ランダムMACアドレス設定
ランダムMACアドレス設定は、接続するSSID毎「プライバシー」設定内にあります。

1-3.SSIDに紐づく「ランダムMACアドレス」
現在接続しているSSIDネットワークの詳細を開くと、「ランダムMACアドレス」が確認出来、デバイスとは違うMACアドレスが割り当てられている事が分かります
- ランダムMACアドレス 72:51:8a:1a:76:a8


1-4.無線アクセスポイントから確認
Aironet 3800の管理画面から確認すると、ランダムMACアドレスを使用して接続されている事が分かり、デバイスライプが「未分類」となっていることが分かりました

ランダムMACアドレスを使用する事で、端末の特定を困難にしている事が分かります。
2. Windows OS
使用するWindows OS端末は、「Thinkpad X1 Carbon」を使用します。

2-1. Thinkpad X1 Carbonの「OSバージョン」と「MACアドレス」
- OSバージョンは、「ファイル名を指定して実行」-「winver」→ Windows11 25H2
- MACアドレスは、コマンドプロンプトから「ipconfig /all」→ F4:D1:08:4A:2F:7C


2-2. ランダムMACアドレス設定
Wi-Fi全体と、接続SSID毎の2か所設定があります。


2-3.SSIDに紐づく「ランダムMACアドレス」
現在接続しているSSIDのプロパティ画面を確認すると、MACアドレス情報が確認出来ますが、先程確認したMACアドレスとは異なる事から、ランダムMACアドレスが割り当てられている事が分かります。
- ランダムMACアドレス 7E:32:94:80:1A:12

2-3.無線アクセスポイントから確認
Aironet 3800の管理画面から確認すると、Android端末同様に、Windows端末も、ランダムMACアドレスを使用して接続されている事が分かり、デバイスライプが「未分類」となっていることが分かりました

ランダム化ON時の挙動
ランダム化を有効にした状態では、以下の現象が確認できます。
- 同一端末でもMACアドレスが異なる
- アクセスポイント上で別端末として認識される
👉 ネットワーク側からは「毎回違う端末」に見えます
ランダム化OFF時の挙動
一方、ランダム化を無効にすると、
- 常に同じMACアドレスを使用
- アクセスポイント上でも同一端末として認識
従来通りの挙動になります。
| 項目 | ON | OFF |
|---|---|---|
| MACアドレス | 変化する | 固定 |
| 端末識別 | 困難 | 容易 |
| 管理性 | 低い | 高い |
MACアドレスランダム化の影響

MACアドレス制限(フィルタリング)への影響
MACアドレスフィルタリングを設定している場合、
ランダム化により許可したMACと一致しなくなるため、接続できなくなることがあります。
DHCP・IPアドレス管理への影響
ランダム化により、
- DHCPリースが増える
- IPアドレスが頻繁に変わる
- IP管理が複雑化する
といった影響が発生する可能性があります
ネットワークログ・端末識別への影響
- 同一ユーザーの追跡が困難
- ログ分析の精度低下
- セキュリティ監査に影響
👉 情シス・ネットワーク管理者にとっては大きな課題です
企業ネットワークでの課題
企業環境では特に以下が問題になります。
- 端末管理ができない
- 資産管理との紐付けが困難
- セキュリティポリシーとの不整合
MACアドレスランダム化はオフにすべきか?
結論は「環境による使い分け」です。
オフにした方が良いケース
- 企業ネットワーク
- MACアドレス制限を使っている環境
- 固定IP運用をしている場合
オンのままが良いケース
- 自宅Wi-Fi
- 公衆Wi-Fi
- セキュリティ・プライバシー重視
判断に迷ったときの基準
👉 「管理を優先するか、プライバシーを優先するか」で判断します
まとめ|MACアドレスランダム化は理解して使い分けるのが重要
MACアドレスランダム化は、プライバシー保護の観点で非常に重要な機能です。
一方で、
- ネットワーク管理
- セキュリティ運用
- 端末識別
といった面ではデメリットも存在します。
そのため重要なのは、
👉 仕組みを理解した上で、環境に応じて適切に使い分けること
です。
特に企業ネットワークでは、運用ポリシーと合わせた設計が不可欠です。



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